1次選考 あと一歩の作品選評

『また、君がいない夏』/岡 裕美

あらすじ&コメント

『マイ・フェア・レディ』男女逆転版のバリエーション。思い込みが強く、女の子とのつきあい方が不器用で、自分の将来にも迷いのある高校三年生の信幸の前に、謎の美少女・夏南が現れて、デートの仕方から進路指導までしてくれるうえ、信幸のコンプレックスも解決します。ちょっとドキドキの高三男子の夏が生き生きと描かれ、そして夏南の秘密が明かされていくクライマックスから感動のラストを迎えます。脇役の大人たちがきちんと描かれているのも本作の長所。特に信幸に辛口のアドバイスをする進路指導の堀越先生、いい味出してます。
夏南の正体が、物語のかなり早い時点で読者に推測できてしまうのが難点。男子の心を隅々まで見透かせる女性って、母親か妻かに限られてしまうでしょう? 逆に言うと、信幸が夏南の身元に不審を抱くのがあまりに遅すぎて、鈍感すぎないかと感じてしまいます。もちろん本作の核心は謎解きではないのですが、夏南の正体はクライマックスにつながる重要な伏線なので、やはりもう少し引っぱってほしかったと思います。
文章にも書き間違いがちらほら。もうひとがんばりしてください。


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