2次選考 あと一歩の作品選評
『悪い明日』/ビビ
失明した母親を世話するために郷里に帰った九条旬也は、地元の公立小学校の教師となって二年生のクラスを担任する。生徒の一人、真谷莉里の母親・咲穂はモンスター・ペアレントだとの噂があったが、身を粉にして働いている彼女に会った九条は、やがて互いに惹かれ合うようになり……。
モンスター・ペアレント、万引き、借金、離婚、売春、不倫、自殺、殺人……と、ドラマの要素がてんこ盛りで、文字通り「悪い明日」にまっしぐらに堕ちていく二人を描き切った筆力には高い評価が集まった反面、九条が狭き門である教職に簡単に再就職している点や、ジェットコースターのような展開に「リアリティがない」という意見もあり、「小説にはブレーキを踏むことも重要」という厳しい意見から通過には至りませんでした。