1次選考 あと一歩の作品選評

『リョウオモフィン』/川口愉快

あらすじ&コメント

看護師2年目の未茅(みち)は、駅のホームで白く発光する男が自殺しようとするのを見かけ、彼を助けようと体当たりした。だが男性は打ちどころが悪く、記憶喪失になってしまい、未茅が看病することに。男は、熱烈な片想いの相手がいた気がするなどと、少しずつ記憶を取り戻していたが、自殺するほどの想いを取り戻すことが、果たして彼にとってよいことなのか。おりしも街では連続殺人鬼が跳梁し、戦場に等しい病院で日々生死と向かい合う未茅は、再びあの白い光を目撃する……
医療サスペンスとして楽しく読んだが、最後のラブ登場に、ここだけ人称が変わることもあり、かなり唐突感があるので、もう少し前半に鳴希パートを入れるなど、伏線を仕込んでもよいのでは。医療現場の描写やそこに従事する人々の葛藤などはとてもイキイキと描かれているし、複数のエピソードを同時に操って、テーマに収斂させていく手腕は見事だった。しかし最後だけ犠牲を出さずに両方助かったというのが、せっかくそこまで緻密に積み上げてきたプロットを裏切るようで、残念。


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