1次選考 あと一歩の作品選評

『サンタ・ムエルテ』/高安フレンジィ

あらすじ&コメント

タイトルの「サンタ・ムエルテ」とは死の聖人のこと。恋人と別れたばかりで90%リア充な生活を送っていたワタシは、身に覚えのない連帯保証人として不思議な喫茶店「サンタ・ムエルテ」の店長に呼び止められ、強制バイトに引きずりこまれる。店名にふさわしく、店内にはグロテスクなアート作品が並び、バイト仲間は顔面タトゥーのイケメンと手フェチの美女、眼球ピアスの美青年はみんな一風変わった趣味と経歴の持ち主。なぜ主人公は知らない間に連帯保証人になってしまったのか、シングルマザーとして愛情を注いで育ててくれたはずのママの秘密とはいったい何なのか、予想がつかない展開にドキドキしました。人間の願いや欲望を一時的に叶えて、その見返りや代償を求める謎の組織の騒動に主人公が巻き込まれていく、という奇抜な発想が面白かったです。
ただ、個性的なバイト仲間については深く掘り下げて書いているのに、バイトするきっかけを作ったママの存在、主人公との関わりの薄さが不自然。情報をたくさん詰め込み、話を大きく広げたのに、あっけなく感じる結末が残念です。


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