1次選考 あと一歩の作品選評
『この愛の果て』/橋本広樹
あらすじ&コメント
桐谷美咲は18歳のときから10年間、日本画家の重鎮、水谷時子の内弟子として代理作家を続けていた。時子の紫綬褒章の内祝いパーティで自称・画商の蜷川泉と出会って魅かれるが、彼は50億円の財産を狙って30歳年上の時子と結婚する。
それをきっかけに美咲は時子の代理作家を辞め、画家としてデビューするために日展に出品しようとする。美咲を心から大事にしてくれる美術雑誌の編集者、早瀬龍彦との付き合いも始まった。だが、泉がマンションに現れてレイプされたうえに、書きかけの絵や小下図を盗撮され、時子がそれを模写して出品したために落選する。それでもマンションに通ってくる泉のセックスの虜になった美咲は反発しながらも彼を愛してしまう。そして、2人の関係を知って荒れ狂う時子を泉が殺してしまい、逃避行が始まるが……。
ストーリー展開はうまく、最後まで興味を引きつける。だが、財産狙いで高齢の女性と結婚とか盗作とか新鮮味がない。泉が初対面の美咲をパーティの最中にエステや美容院、ブティックに引っ張り出して、地味な女から人が振り返るような美女に変身させるのは『プリティ・ウーマン』、ラストシーンもすぐ思い浮かぶ映画があるのが残念。