1次選考 あと一歩の作品選評
『オレンジ通り3-1』/孝岡真理
あらすじ&コメント
長身イケメンのわりには恋人イナイ歴4年の邦芳は、夜の仕事を歴任した挙句、ギャンブルで借金を作り、昼の仕事を探すこと面接17件。やっとありついたのが、派遣の下水処理だった。臭い汚いキツイ仕事だ。それでも、間もなく赴任してきた正社員の年下女子・翠の下水処理への情熱と凛とした眼差しに惹かれ、仕事にもやりがいを見出していくが……。
下水処理の工程が、相当の取材量を感じさせる詳細さで、お仕事小説として面白く読んだ。だがラブストーリー大賞としては、恋愛要素があまりにも薄いのでは。全体の3/4は仕事の話なのではと思うほど下水処理の説明が多くて、いや、説明が上手いし描かれることが少ない貴重な分野の仕事なのでけっこう読まされてしまうのだけど、その分、物語の筋が弱い。翠に拒否反応を示して邦芳の腹が下るところなど細かい人物のエピソードは繊細さがあって上手いと思うのだが、尻つぼみ感のある結末というか。そしてエロイ兄嫁(設定はいいと思う)がなんであんなに聖母なのだろうか。