1次選考 あと一歩の作品選評

『幼くて、醜くて、歪んでて、問題だらけの♂♀たち』/黒崎典

あらすじ&コメント

題名通り、幼くて、醜くて、歪んでて、問題だらけの夫婦、由里と孝二の愛と戦いの日々を描いたコメディ小説。膨大な小ネタを積み重ねることによって、次々と笑いをかぶせて楽しく読ませるが、中盤くらいから登場人物たちの幼さ、醜さ、歪み具合に食傷ぎみになってしまった。「孝二を好きかどうかわからなくなると、私は嫉妬の具合で気持ちを確かめる。私の嫉妬心は私自身より遙かに純粋でわかりやすい」という恋愛のあり方は、ある意味新鮮なラブストーリーだが、ラスト、「孝二を毎度許してしまうのも、我慢してでも続けようとするのも私。つまり孝二といるのは私の責任」という心境に至るヒロインの“成長(?)”のきっかけが弱い。もしこの流れが、大きなストーリーを構築するように計算高く描かれていたら、傑作になっただろうと感じた。


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