第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品

『ママの男』/鳰 夏湖

あらすじ

女子大生の須永真由は悩んだ末に女手ひとつで育ててくれた母の絢子と、ひと回り年下の恋人、木崎涼輔との結婚を認める。しかし真由が婚姻届の証人欄にサインをした数時間後、二人は自動車事故に遭い絢子だけが亡くなってしまう。真由にとっては涼輔だけが頼れる存在となり、涼輔にとっては真由だけが心を癒してくれる存在として、残された二人の仲は近づいていく。涼輔に恋心を抱き始めた真由は、絢子がまるでライバルかのように思え、絢子の遺影を隠したり話題を避けたりと嫉妬に悩まされる。その一方、涼輔も真由への好意とどうしても消せない絢子への思いに苦悩する。年の瀬が近づき、遺品整理を始めた涼輔は真由が絢子と自分にプレゼントしてくれたマグカップを見つけ気持ちの整理をつける。


評価・感想

年齢不詳の美魔女が増え、ひとまわり年上のアネさん女房も珍しくなくなっていますので、こうした話はもしかしたらどこかで本当にあるのかもしれません。涼輔の一挙一動にキャーキャーする会社の口さがない女子社員たちもリアルでした。前半の真由は心の弱さから不倫をして涼輔に救ってもらうなど受け身に書かれているのに、後半は急に人が変わったかのように涼輔に対してずうずうしく面倒臭い女になってしまいました。涼輔と真由の心が寄り添い、絢子の死を乗り越えるエピソードが丁寧に書かれていたら最後の場面の感動が際立つでしょう。とはいえ、王道のラブストーリーで今という時代を書ききった手腕はお見事でした。

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