第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品
『美将団 ~信長を愛した男たち~』/有沢真由
あらすじ
戦国の風雲児、織田信長の周りには、お小姓と呼ばれる才色兼備の側近が数多、存在していた。女性が戦場に出向けない戦乱の世において、主君の身の回りの世話だけでなく、夜の務めも担うのがお小姓の役目。主君から可愛がられたお小姓は、権力者としてさまざまな利益を得ることとなる。ある者は出世のため、ある者は主君を慕う気持ちから、お小姓たちはトップの座を競い合っていたのである。
美男子が揃うお小姓のなかでも長谷川竹は、その類まれなる美貌で信長の寵愛を一身に受けていた。一方、竹も天下一の武将・信長を深く尊敬し、心から愛していた。しかし、時が経つにつれ、信長の寵愛は同い年で人格者の万見仙千代に移り、激しい嫉妬の念に駆られた竹は、様々な手を使って仙千代を陥れようとする。狂おしいほどの情愛のおかげか、一時は信長の心を取り戻せたように思えた竹であったが、天下の美少年・森蘭丸の登場で、再び信長の心は離れていく。ままならぬ恋に苦悩する竹。そしてついに、運命の時、本能寺の変がやってくる……。
評価・感想
信長のお小姓といえば、森蘭丸があまりにも有名でありますが、長谷川竹(のちに武将・長谷川秀一となる)を主人公にした着眼点がいい。長谷川秀一と本能寺の変に関するかかわりは諸説あるものの、独自の切り口でまとめてあり、歴史マニアでなくても楽しめる軽いタッチの歴史エンタテインメント小説として、面白く読ませていただきました。織田信長をはじめとする当時の戦国武将の男色事情は、非常に興味をそそられる部分なので、「夜の務め」の部分をもっと書き込んでもよかったのではないでしょうか。そこが非常に惜しい。文章力、構成力は非常に優れているものの、男色というテーマにしては、情景描写や感情表現がさらっとしすぎている感があるので、もっと情緒のある遊びの文章が加わると、小説として深みが出ると思います。