第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品
『タバコの煙、コーヒーのにおい』/村崎えん
あらすじ
カラオケ、昼寝、たまに合コン。自堕落な大学生活を送った菊池はるかは、パチンコ店に就職した。膝上15センチのミニスカートとフリフリ・レースのエプロン姿でコーヒーを売り、指導係やマネージャーとの人間関係にもまれてクタクタの毎日。専業主婦狙いで結婚願望の強い同期のように寿退社を目指すべきか、それとも転職を考えるべきか、悩むはるかの唯一の願いは、学生時代に輝いていた初恋の王子様・小野亮太との運命の再会だった。しかし現実には夢のような出会いも再会もない。髪も髭も、もじゃもじゃでヨレヨレのTシャツ、パチンコ店の店員から「ヤバい客」だと後ろ指をさされる常連客、通称ビッグウェーブから何故かつきまとわれて……。
評価・感想
騒音とタバコの煙に包まれた職場でミニスカートになってコーヒーを売る自分を見つめる冷めた視線、日常に吐き出す毒のようなモノローグがよかったです。投げやりなようでいて、機微に通じた説得力のある文章にも、とても魅力を感じました。指導係で気難しい先輩・女バーテンダーとの関係が微妙に変化していくまでの過程や、20代女性の心情が丁寧に描かれている点も高く評価できると思います。ただ、頭もじゃもじゃでヨレヨレTシャツのビッグウェーブと呼ばれる常連客、パチンコ店の店員達から「キモイ」と陰口を叩かれる男の正体はわりと早めにわかってしまいます。彼女にとってのサプライズだけで話が終わるのではなく、二人がどうなっていくのかが重要ですし、その部分のやりとり、会話が冴えているのも印象的でした。