第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品

『悪い明日』/ビビ

あらすじ

失明した母親を世話するため郷里に帰った九条旬也は、地元の町の小学校教師となって小二のクラスを担任する。生徒の一人、真谷莉里の母親は給食費・教材費・PTA会費滞納、そのうえ前年度の担任をノイローゼ退職に追い込んだモンスター・ペアレントだとの噂があった。だが、給食費徴収のために実際に会ってみた真谷咲穂は、身勝手な別居夫の借金返済のために身を粉にして働く美しい女性だった。貧困に苦しむ母子に手を差し伸べようとする九条は、やがて咲穂と惹かれあうようになるが、二人の噂はすぐに小さな町に広まり、教師という立場との板挟みに。さらには咲穂の別居夫の奸計が二人を追いつめていく。


評価・感想

まっしぐらに不幸へ堕ちてゆく二人の純愛をドライな文体で描きあげて読みごたえ充分。ささやかな幸せが「悪い明日」を呼び込む悲劇の王道に読者をぐいぐい引き込む筆力には鬼気迫るものがある。周囲の無責任な好奇心、小さな悪意、幼稚なエゴイズムに満身創痍となりながら愚直に耐える二人の姿は受難劇のようで、マゾヒスティックな色気すら漂う。物語はバッドエンドだがカタルシスがあり、希望も残る。

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