第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品
『空と睡蓮』/樋口和美
あらすじ
高校2年生のクラスメート3人を中心にした愛と友情と成長の物語。父の浮気で母が自殺した向井真木と、母が仕事と恋にかまけている上原優香子は、孤独と情の狭間で揺れ動きながら奇妙な連帯感で繋がっていた。優香子は付き合っている12歳年上の木川知也が肉体関係を持とうとしないことに苛立ちと不安を感じ、ゲイの真木はで屈託のない三崎尚弥に密かに恋心を抱いている。だが、尚弥は優香子に思いを寄せ、告白する。それをきっかけに、真木は、自分はどうありたいかを見つめ直し、尚弥に告白してしまう。知也と後輩の仲を疑う優香子も意を決して、彼に本音をぶつける。
この3人に同級生の園田千尋と鈴木孝文、ゲイバーのママとアルバイトの大学生、ユウヅル、真木と父が同時に関係を持っている男性が絡み、複雑で切ない青春群像が展開する。
評価・感想
登場人物が多いのにみんなキャラが立っていて魅力的なのが見事。そのため、複雑な人間関係もストーリーもすんなり頭に入る。ゲイ、三角関係、親子関係、セックスと深刻なテーマが重なっているが、高校生たちやゲイバーのママの会話や行動が洒落ていて面白く、重さを感じさせずに物語に引き込んでいくところもうまい。
ただいろいろなものを詰め込みすぎているのと、構成は一考の余地あり。タイトルの「空と睡蓮」も変えたほうがいい。