第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品

『ぞうさんの虹』/宮本奈々

あらすじ

主人公・ふみは、5歳のとき、父の出張先のタイで、現地の少年で息子・チュアンに出会う。そして、10歳、15歳……5年ごとにタイ、日本で、かけがえのない時間を過ごす二人。恋心の芽生えとともに、互いの置かれた環境、立場の違いも次第に自覚していく。そして、ふみ・20歳。建築家を目指し日本留学をしていたチュアンと4度の出会いが……。大人になった二人の出した結論は?


評価・感想

幼い頃の異国での出会いを心に抱き続ける二人の “純愛”物語。大甘のストーリーで、展開にもご都合主義のところもあるのですが、そう思いつつも、とても気持ちよく読める作品。少年・少女から、多感な十代へ、そして、一人前のオトナ(といっても、そのトバ口にさしかかったばかり)へ、互いの環境や意識が変化していく様を説明的になりすぎず、ディテールの描写を積み重ねることによって、巧みに表現できているのが大きな美点。これができている作品は、かなり稀有だと思います。作品全体に独特の透き通った空気感もあり、若い著者であるだけに大きな可能性を感じて、通過作品に。
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