第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品

『すべてあなたと出会うために』/今千夏

あらすじ

15歳で文学賞を受賞した過去を封印して普通のOLになった23歳の藤原瑞希は、5年間付き合い、結婚を夢見ていた隆にフラれ、アパートのベランダで首を吊って自殺しようとするが失敗。そのとき、向かいの高級マンションのベランダに幽霊がいるのを見る。
 確かめに行くと、それは15歳のときに事故で左足を切断したイデ君だった。彼が3年間、一人暮らしのマンションに引きこもっているのにブチ切れた母親にベランダに閉め出されていたのだ。
 彼を助けたのがきっかけで、瑞希はたびたびイデ君を外に引っ張り出し、引きこもりパソコンで大金を稼いでいる彼が少しずつ外の世界に出ていけるようになる。瑞希も彼に癒され、徐々に魅かれ合っていく。そして、偶然、彼女の処女作を読んでいた彼に励まされて、もう一度、小説を書くことにする。その出版を目指したとき、驚くような事実が発覚する。


評価・感想

「私」である瑞希と「僕」である”イデ”君が交互に語る構成。失恋、自殺未遂、事故で片足切断、引きこもりと重いテーマを持ちながら、二人とも自己陶酔型の悲劇の主人公にならず、自分を客観的にユーモラスに捉えている視点がいい。ハートウォーミングな純愛物語が微笑ましく読める。
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