第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品
『石楠花色に黄昏て』/高橋正美
あらすじ
尾瀬を訪れるハイカーたちに自然解説などを行なうサブレンジャーのアルバイトをしている学生・杉谷。今年も夏の尾瀬にやってきた杉谷は、新人の島村彰子の指導係を任される。二人は、日々の活動を通じて、さまざまな愛のカタチに出会う。亡き夫へ妻が寄せる愛、少年が難病の少女に寄せる幼くもピュアな思い、ある秘密を抱えた老夫婦の愛……。さまざまな愛を、ミズバショウ、モジズリなど、尾瀬に咲く花々に寄せて綴った連作。
評価・感想
文章力、構成とも、水準以上で、「書き慣れた」感のある作品。高山植物をモティーフにした連作にするという全体構想も、かなりの成功を収めていると感じました。一作目の語り手を男性主人公に、二作目の語り手を女性主人公にして変化を出すなど、なかなかに巧み。描かれている恋愛模様は、オーソドックスなもので新味には多少かけますが、舞台設定に清涼感があり、“癒し”効果のある一作だと思います。