第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品
『今日、きみと息をする。』/タケダアヤノ
あらすじ
高校生の宮澤けいと(男)、田村夏美(女)、沖泰斗(男)は三人だけの美術部に所属していて、けいとは夏美のことが、夏美や泰斗のことが、泰斗はけいとのことが好きという、ややこしい三角関係に陥っていた。気持ちを胸に秘め、または自分の本心には気づかないまま、絶妙なバランスで三人の日々は過ぎていくが……。
今後の進路、人間関係、家庭環境など、三者三様の高校生ならではの悩みを抱えながら、人生と向き合っていく高校生たちの姿を描いた青春小説。
評価・感想
まず、まだ19歳という若さながら、その文章力の高さに感心しました。また、けいと、夏美、泰斗のキャラクターも非常にうまく描き分けられていて、視点が章ごとに変わり、その始まりが「息を止めてみる」「息を吐いてみる」「息を吸ってみる」と続くあたりも、おもしろい構成だと感じました。
ただ、四章(04)以降の視点変更で三人称やら一人称やらが混在していて、途端に読みづらくなってしまった点がとても残念。三人の視点のみで構成してしまったほうがよかったのではないかと感じました。
しかし全体的にはいまどきの高校生をリアルに描けていて、また、多感な高校生ならではのそれぞれの「自意識」が嫌みにならないよう上手に表現できている部分を買い、通過作品としました。