第8回日本ラブストーリー大賞1次通過作品

『彼女たちの逃亡』/宮原さと子

あらすじ

幼少から人の考えていることが「聞こえる」と思い込んでいる藍子は、いまや三十路に突入して一方的な片想いの相手にストーカー中。ある日、恋する男を殺そうとする藍子は未遂に終わり、霊柩車を購入して旅に出る。いくあてのない道行きのさなかに出会ったのは、ミュージシャンの恋人を刺して逃亡中の女子高生、真名だった。


評価・感想

非常に暗い話。主人公のふたりは死にとりつかれていて、通過儀礼を果たすことで再生しようとする物語である。とはいえ、ストーカー、霊柩車、読心術、行旅死亡人など、奇異な設定には不思議な説得力がある。荒削りで説明不足の箇所もいくつか見受けられるが、この作品のオリジナリティには見逃せないものがあった。

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