第一次選考あと一歩作品詳細
『聖の福音』 かなつちなつ
あらすじ&コメント
隆行は早くに母を亡くしたうえ、中学時代からの恋人、詩織も5年前に白血病で亡くしている。隆行は詩織一筋のつもりでいたが、余命半年の祖父が聖という女の子との結婚を切望するので、仕方なく結婚する。一方の聖は児童養護施設で育ち、隆行の祖父の支援のおかげで自立できた。隆行の祖父は、聖が隆行と結婚すれば、聖が出すつもりだった児童養護施設への寄付金も出してくれるという。聖はその申し出を喜び、同時に隆行の写真にも一目惚れして結婚を承諾した。
聖は新婚生活を嬉々として迎えるが、愛のない隆行は聖を召し使いとしてしか扱わない。それでもへこまず献身的で無邪気な聖に、隆行は徐々に惹かれていく。しかし、隆行を好きな詩織の妹、香織が、隆行と聖の関係を壊そうと策略をめぐらす。そのせいで聖は隆行のもとを去ろうとするが……。
いちばん魅力を感じたのは、聖のキャラクターです。恵まれない生い立ちで足に障害がありながらも、明るく健気。子犬みたいに目がくるくる、キャンキャンとはしゃぎ回る姿が目に浮かぶようで、隆行が惹かれていく様子にも説得力があります。ただ、児童擁護施設育ちの主人公とお金持ちという組み合わせは、韓国ドラマをはじめよくあるパターン。これとは異なる設定でも、聖の魅力を充分活かせる物語ができたのでは。
また、隆行の祖父が言い残した「縁」には、もっと複雑な事情や背景をプラスしたほうが、物語にほどよい重さが加わり、より印象が強くなったように思います。
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