第一次選考あと一歩作品詳細

『「潮」は存在したか』 ハルノ 富香


あらすじ&コメント

明治・大正期の画家「片山懍」の研究家である柳瀬広貴のもとに乙川麻衣子という女性が現われ、行方不明と伝えられている「懍」の第2回文展出品作『潮』と関係があると思しき絵を見せられる。柳瀬は恩師、只野正明の「片山懍」研究に協力し、彼が名声を得るための縁の下の力持ちになっていたが、恩師への対抗心から麻衣子が持ち込んだ新発見の作品を使って博士論文を書きたいと思い、その調査をしたいという彼女に協力する。同時に麻衣子への想いも募っていく。だが、問題の絵を柳瀬のコネでエックス線調査したあと、その結果と絵を持って麻衣子は姿を消してしまう。しかも、柳瀬は彼女の行方を追ううちに、彼女が目論んだのは彼を利用して絵の真贋を解明するだけでなかったことが明らかになっていく……。

実在の画家、中村彝と行方不明になった『岬』という作品、それを取り巻く人々をモデルにした、かなり本格的な小説。美術ミステリーとして面白い。だから、恋愛度が低いのが残念。文章も重複と説明が多くて魅力に乏しい。もう少しブラッシュアップすれば、発売に値する作品だと思う。

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