第一次選考あと一歩作品詳細

『ピンキーリング』 櫻井 千姫


あらすじ&コメント

 若さゆえにセックスと恋愛の違いがわからず、容姿のよし悪しで決まってしまう小さなヒエラルキーに閉じこめられ、人の気持ちが読めないために相手を傷つけ、傷つけられしてしまう高校2年生たちの未熟な恋愛模様が、6つの物語として綴られています。それぞれの話は多少リンクしているようですが、その結びつきはそれほど強いものではなく、連作長編というよりは短編集として読んだほうがいい出来映えです。登場人物の切ない心情の描き方など、なかなか堂に入っていて、いっきに読ませる筆力に感心しました。ですが、一本の太いストーリーの幹を構成する長編小説と比べて、インパクトは弱いと言わざるを得ません。未熟な恋愛に苦しむ若い男女が置かれた閉塞感がよく描けているだけに、その点が残念です。高校生の読者に「あるある」と感じさせる恋バナを提供する力量はあるのですから、ラストの「正々堂々、子どもでいようじゃないか」というメッセージがもっと効果的に読者の胸に迫ってくるような描き方を目指すべきだったのではないかと思います。そのためには、読者が強く感情移入するような登場人物と、最後まで読者の興味をひく魅力的な物語を構築し、長編小説を仕上げる技術を磨かねばなりません。

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