第一次選考あと一歩作品詳細

『さんかくしかく』 ドイ エイコ


あらすじ&コメント

散歩に出たついでに蕎麦屋でカツ丼を食べていたチエミに衝撃的なニュースが飛び込んできた。夫と自分の死亡のニュースだった。夫と自分が乗っていた車が事故にあい、海に沈んだというのだ。夫は死んだのか?自分もすでに死んでいるのか?茫然自失するチエミの前にひとりの大学生があらわれる。ふたりは意気投合し、ついには恋愛感情に発展。しかし、お互いに別に好きな人がいて……。

小説は出だしが非常に重要です。面白いと言われる小説は、最初の1ページでぐいぐいと読者を引きずり込んでしまうもの。この作品も、とにかく出だしがいい。蕎麦屋でカツ丼を食べていたら自分が死亡したというニュースと出食わした、なんて、そうそうある話ではない。自分はじつは死んでいるのか、別の女と間違えられているのか、ニュースそのものが間違いなのか……、冒頭からいろいろと想像を掻き立てられ、ストーリーのなかにぐっと引き込まれた。惜しむべくは後半。チエミと大学生の藤木が愛を語り合うあたりから、勢いがなくなってしまった。出だしが面白いのに、途中から単なる恋愛小説になってしまっているのが非常に残念。スピリチュアルな展開にするのか、ミステリーふうにまとめるのか、愛憎劇にするのか、もっと出だしを生かした構成にしてはどうか。

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