第一次選考通過作品詳細

『南高橋で……あっちゃんと僕』 たけだ あつこ

あらすじ

 一流電機メーカーに就職したが、「自分の色を出せる仕事がしたい!」とホテル業界に転身した石川直也。だが、36歳になり、仕事も恋人との関係もマンネリ化してやる気のない日々を送っていた。そんなとき、隅田川にかかる南高橋で小学校3年生の女の子と出会う。彼女は「あっちゃん」といい、なぜか直也のことを「石川病院のあっちゃん」だと思い込んでいろいろな話をする。洋服も話も昭和30年代の子どもとしか思えない彼女を不思議に思いながら、仕事や自分自身に対する愚痴を吐露すると「あっちゃん」は妙に大人びた意見を言い、それは直也の心に素直にしみ込む。毎週のように彼女に会いに行くうちに、直也の気持ちが徐々に柔らかく優しく変化し、仕事も恋人との関係も好転していく。そして、「石川病院のあっちゃん」を思い当たった直也が本人に会いに行くと、意外な事実がわかる。


評価・感想

 ファンタジーだが、昭和30年代の小学生「あっちゃん」の存在が愛らしく温かく、すんなり受け入れられる。直也も「石川病院のあっちゃん」も自省的で自分の負の部分をしっかり見つめているところも読後感がいい。ふたつの恋が織りなすハートウォーミングなラブストーリーだ。

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