第一次選考通過作品詳細
『鬱くしき人々のうた』 秋山 健太郎
あらすじ
へちまコーラの営業マン、丹下三平は高校時代に同級生だった直美と結婚したが、ぶくぶくと豚のように太る妻に愛情が持てない。そんなとき、同じく高校の同級生だった亀川から電話がかかってくる。同級生の本間みちるが自殺したというのだ。葬式に出席するために帰省する三平と直美。三平は高校時代にみちるに恋ごころを寄せていたことを思いだす。みちるはなぜ死んだのか?棺をぼんやり見ていた三平にみちるの「おとうさん、ごめんなさい。ゆるして」という声が聞こえてきた。これは高校生の時に殺されたみちるの父親の事件が関係しているのか?あのころに戻りたい、そのためだったら悪魔に魂を売り渡してもいい、と思う三平の前に女子高生がコスプレしたようなキュートな外見の悪魔フリンが現われる。紅茶とコンビニのシュークリームを報酬に、条件付きながらも三平をあのころに戻してくれるというのだ。三平が過去から戻ると未来が変わっていた。
評価・感想
アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」などで最近人気のタイムリープもの。第2回大賞の『守護天使』同様、冴えないサラリーマンが主役です。前半のグダグダなダメおやじっぷりと、タイムリープした過去の世界で名探偵ばりに活躍する高校生の主人公の対比が面白いです。ストーリーそのものは王道中の王道ですが、出てくるキャラクターがどれも感情豊かで魅力的。いい年をした大人の一生懸命さが可笑しく、せつなく、漫才のような会話と疾走感のあるハイテンションなモノローグで一気に読ませます。初投稿ということで小説としては余分なところ、書き足りないところなど編集のしがいがある原稿ですが、47歳でしか書けない人生の機微が盛り込まれており、よく練りこめば一流のB級ドラマにも大バケする予感がします。タイトルはつけ直したほうがよさそうです。
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