第ニ次選考あと一歩作品詳細

『最愛』 佐藤 慎一郎

 『最愛』は、交通事故による怪我で死を待つだけの妻と、彼女を毎日、見舞いに訪れる夫とのやりとりを淡々と綴った静かな物語。実は夫は、同じ交通事故で死んでいることがラストで明かされ、死後、ふたりは再会することになります。
 「ふたりが出会いから結婚に至るまでの思い出を病室で回想するシーンを、アルバムという小道具を使いながら進めるあたりに心憎い工夫が感じられた」、「一つひとつの場面が美しい映像として喚起され、映画を観ているような気分になった」と、作品全体に流れるムードに賞賛の声が寄せられました。その一方、「ラストで明かされる結末には、それほどの驚きがなかった」との声も多く、「むしろラストではなく、中盤でそれを明かし、物語のムードをガラリと変えて描くほうがよかったのでは」といった意見もありました。

一覧に戻る