第一次選考あと一歩作品詳細
『レインボーブリッジ』 三田 実由
選評
医者の息子の隼人は、医学部志望の受験生。2浪が確定したため鹿児島から上京したが、受験勉強もバイトもうまくいかない。ある日、ひょんなことからスカウトされ、ホストクラブのホストになった。だが、なかなか指名客がつかない。キャッチセールスのため隼人が声をかけた女性は、店でトップのキャバクラ嬢だった。2人はちょっとした事件をきっかけに、つきあい始めるが……。
いかにも田舎から出てきた男の子、隼人の、ホストの世界にビックリし尻込みしたり戸惑ったりする姿は、とてもリアル。自分の半端さダメさに悩み、今後を考えて揺れ続ける隼人の気持ちにも共感がもてます。そんな隼人が、ホストクラブの同僚やお客、親友たちとのつきあいの中で何かに気づき、ホストがホストクラブに来る女性をどう思っているか、営業はどのようにするかといった細かい点も、読み手が「なるほど~」と思うほど丁寧に描けています。物語の進め方も上手で、小説を書く技術はハイレベルと思いました。
ただ、ホストの世界が、すでにマンガでヒットしドラマにもなっているので、全体が新味に欠けた印象になっています。また、九州男児といえば、保守的で有名(誰もがそうとは限りませんが)、しかも医者の息子となると、そうそうキャバクラ嬢にあっさり恋をするかな、両親もあっさり認めてくれるかなと、個人的に首を傾げたくなりました。新宿歌舞伎町という日本一のダーティな街で、悪人が一人も出てこず、みんないい人なのも気になりました。
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