第一次選考あと一歩作品詳細
『月の香り ~セント オブ ザ ムーン~』 藤白 明青
選評
恋人の浮気現場を目の当たりにしたレイは、ショックで1人ドライブに出る。旅先の海で入水しようとした女性、陽(ひかり)を助け、彼女の家で一泊することに。その夜、陽の父親の直人はレイに、直人と陽の母親とが結婚に至った経緯を語り始める。それは、一途なゆえに苦しみが多く、それだけに聞く側が心豊かになる恋物語だった。
若い頃の直人の片思いは、一途だけど何かと遠慮がちで、年上の女性に恋した大学生の男の子らしい、おどおど感や必死さ、緊張感がひしひしと伝わってきました。相手の女性に子どもができても、結婚しても、ずっと好きでいる。その熱い気持ちが少々の苦みを交えながら、非常に爽やかに描かれています。文章が素直で、自然や心理描写もうまい。また、登場人物のどの人にも魅力的で好感がもてます。しかし、1つの物語で主要な人物が3人も急死するのは、ちょっと不自然。悲劇を入れず、普通の生活を続ける中での恋物語をぜひ、次回に。
→ 一覧に戻る