第一次選考あと一歩作品詳細

『恋する指先』 村田 真奈美


選評

 恋愛を介さないセックスフレンドだった美海と陸。だが、美海が陸に恋心を抱いてから、ふたりの関係はからまわりしていく──。美海の濃厚な心理描写で綴られた力作で、楽しく読ませてもらいました。ただ、美海がセックスフレンドだった陸との関係に恋を感じる過程には、心理描写だけでは不十分で、それにストーリーをうまくからませないと、説明調になって説得力に欠けてしまいます。美海が恋心を抱いてから、ふたりの関係がぎくしゃくし始めるところも、理屈では理解できるのですが、胸にせまってきませんでした。こういう説明は、ストーリーを動かし、登場人物の行動で語らせてこそ効果的なのではないでしょうか。バーテンダーの亮や部長など、重要な役柄にもかかわらず、登場場面が少ないために浮いている印象を受けてしまうのも残念なところです。とはいえ、充分、筆力のある方だと思いますので、小気味よいセリフ、インパクトのあるシーンを作り上げることを念頭において次作に挑戦してください。

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