第一次選考あと一歩作品詳細
『キューピット・エンジェル』 伊原 正時
選評
肝不全で危篤状態になったくるみ。体から魂が抜け出し、キューピット・エンジェルとなって女の子たちの恋を叶えるお手伝いをする――。ライトノベルのようなテイストで、すらすら読めるのだが、深みとひねりがない。キューピットといいながら、くるみたちがやることといえば依頼主が片思いしている相手の夢に入り込んで夢を操作するだけ……というのもアイデア不足。変身するなり、魔法を使うなり、もっとファンタジックに仕上げてほしかった(全員の恋がうまくいくのも予定調和でつまらない。叶わない恋があってもよかったと思う)。
けれど、数多く登場する医療現場のシーンはリアリティもあるし、テンポもいい。さすがは現役医師だ。病院を舞台にした、生身のキューピットが活躍する物語だったらもっと共感できたのかも。今後は、著者の個性(医者である強み)を生かした作品を書かれてみてはいかがだろうか。
→ 一覧に戻る