第一次選考あと一歩作品詳細

『仮想現実空間の彼女』 長月 美野


選評

 萌系18禁リンクサイトにいる二次元キャラクターのコハルは様々な「属性」を持った仲間キャラクターたちと交流し、日々を過ごしている。彼女が作り出された「想い」の持ち主である現実世界の主と、その想いの対象者だった「思い出」の人がネットを通じて再会した時、思い出が凝集されて創られたキャラクター同士はその主を離れて永遠の中で見つめあう。
 二次元の世界のキャラクターも、「現実の」私たちと同じように他者との関係に疑問を持ち、それでも「自分は何者か」「ここから自分はどこに行けるのか」を問いながら生きているのではないか、と思わせる物語。
 自分が何者なのかも分からぬままにどこかで誰か不確かな相手とつながっている、という感覚が鋭く繊細に描かれている物語だが、ネットワーク技術の正確な理解と多様な解釈を取り込めれば、ストーリーが平板な印象にはならなかったのではないかと思われた。

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