第一次選考あと一歩作品詳細

『In front of heaven』 十六夜 健明


選評

 首都が函館に移された近未来に、闇の仕置き人として暗躍することになった24歳のエリート刑事・百目鬼偲(どうめき・しのぶ)と、彼のパートナーとなった大鳳睡蓮の恋愛を描いたラブストーリー。とはいえ恋愛の要素は極めて低く、事件を解決する百目鬼と睡蓮の活躍がメインとなっています。「粛清」と称して、悪人は殺していい、という危険思想の持ち主である百目鬼と、頭の回転が速く仕事のできるツンデレ女子・睡蓮のキャラクター設定はとても魅力的で、いっそのこと、このふたりを主役としてミステリーを書いてみてはどうかと思いました。
 百目鬼の考え方や、より生きづらくなっていそうな近未来の設定には共感できない部分もありますが、サスペンス小説としてしまえば十分見込みがあると思います。ただ、おそらく恋愛をメインに書かれたからだとは思いますが、事件がいくつも出てきてそれを細切れに解決するというのは、クライマックス感に欠けます。ミステリーを書かれるならば、伏線は残せど事件はひとつに絞ったほうが、より小説としての完成度はあがると思います。

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