第ニ次選考あと一歩作品詳細

『ひとつだけ、たしかなこと』 弘世 武史

 『ひとつだけ、たしかなこと』は、1970年代の都市を舞台に、夢を追い求めることで恋人から別離されてしまう青年と、その青年を愛しながらも安定した生活を選択する女性との恋愛物語。
 「パソコンも携帯電話もなかった時代の若い2人のせっぱ詰まった気持ちが、ひしひしと伝わってきた」と、その時代の描写力は高く評価されました。ただ、1970年代の世界観を現代の若い読者に提示することの意味があるかどうかということについては否定的な意見が多く出ました。「1970年代を『古き良き時代』として描くだけでなく、新しい視点が欲しかった」、「田山花袋の『布団』を思わせるオチが陳腐」、「中絶する前の晩に『手術の不安より、時間を気にしないでずっと一緒にいられることのほうがうれしい』と感じるヒロインの心理に共感できない。『愛している証拠』として『一生セックスができる自信がある』ことを持ち出す部分にも疑問を感じた」といった意見が出ました。

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