第ニ次選考あと一歩作品詳細

『薔薇と棘』 橘 あつき

 『薔薇と棘』は、映画監督の夫の愛を失ったハリウッドのスター女優ローズが、夫の気持ちを取り戻すべく、愛人を殺害するなどの努力をしながらも破滅していく物語。
 1940年代のハリウッドを舞台にした作品ということで、二次選考に残った作品の中でも異色さが際だっていましたが、「あえて現実ばなれした舞台を選ぶことで、登場人物の濃密な情念を浮き彫りにした姿勢は買える」との評価が集まりました。また、「自己愛のかたまりで、嫉妬と敵愾心で殺人まで犯してしまう主人公ローズのキャラクターが迫力満点」との意見もありました。その一方、「1940年代なのに登場人物が食事のカロリーや煙草の煙を気にしたりする描写が挿まれているのは不自然」と時代考証の甘さが指摘されたほか、「主人公の立場をおびやかす若手女優のハイディをはじめ、主人公以外の登場人物の描き方が類型的で、面白味がない」、「ヒロインのあまりのヒールぶりに、感情移入しづらい」との意見もあり、通過には至りませんでした。

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