第一次選考あと一歩作品詳細

『CHAIN』 水瀬 美紀


選評

 県下屈指の難関校・私立青陵学園に首席で入学した天司悟は、始業式の日に担任教師から一年生代表監督生として生徒会の運営に携わるよう告げられる。翌日、第一回生徒会に出席するため生徒会室に向かう途中、学内で徒党を組むタチの悪い三年生一派に絡まれ生徒総監である佐久間良に救われる。
 捨て子であった過去をいまだ引き摺り、闇と戦いながら日常を送ってきた悟は、自分と同じ匂いを持つ良に急激に惹かれていく。一方良は、鉄壁の鎧で身を固め、人を寄せ付けず長年過ごしていたのだが、自分の心の揺らぎに疑問を抱えつつも悟に亡き弟の面影を重ね次第に惹かれ、悟の面倒をみるようになる。
 そんな二人を快く思わない者がいた。学園長であり良の叔父である佐久間徹。徹の邪心に満ちた野望には良の存在は欠かせない物だった。悟と良が親しくなるにつれ、良の邪心や復讐心が薄れていくことを食い止めようと必死になり策を練る徹であった。
 追い詰められた徹は、良の生い立ちに関わる最後の切り札を突きつけるのだが……。
 物語のまとまりや仕上がりは良いのだが、あまりにも型にはまった設定で独自の個性や感性を感じることができない。
 一方、主人公を取り巻く登場人物達はそれぞれキャラクターが立っており、重たい主題を和らげる役目をはたしていることは評価できる点だ。

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