第一次選考あと一歩作品詳細

『空の模様をおぼえてく』 倉梨 みずは


選評

 事故で家族を失って心を閉ざした青年画家に恋した晴来が、絶望的なその恋を成就させるまでの物語。幽霊を見ることができるヒロイン、空の絵しか描かない画家など、ユニークな人物像が印象的に描かれていて、楽しく読んだ。しかし物語そのものは、波乱に富んだ回想シーンとはうらはらに、ヒロインが花屋のバイトから帰って夕食を作るだけの平板なシーンがほとんどで、ラストまでの盛り上がりに欠けるところが残念。書くべきことと、あえて書かずにすますことを見極め、メリハリのある作品に仕立て上げるセンスを磨いてほしい。次作に期待です。

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