第一次選考あと一歩作品詳細

『あいの手紙』 浜本 史朗


選評

 何者ともしれぬ誰かへ宛てた手紙の形式でつづられる恋の物語。就職浪人中の青年が、沖縄で神秘の力をもつ美少女と出会い、生き直す決心をしたものの、二人には残酷な運命が待ち受けていた。書簡体の文章は、主人公=語り手の優しさが読者にひしひしと伝わる名文で、愛する者の未来に呼びかけたエピローグには感涙を禁じ得ませんでした。
 ただし、物語としては、都会で自分を見失った青年が辺境の島の自然と神秘にふれて自己を取り戻すという図式で、これはロマンティシズムの王道とはいえ、あまりにもステレオタイプです。せっかくの文章力を生かすためにも、舞台設定や人物像などに新機軸を打ち出してほしかったと惜しまれます。

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