第一次選考通過作品詳細
『ぼくは甘美な夢を見る』 十実
幼い頃から、女装、お化粧が大好きな須藤海。双子の里花との着せ替えごっこが秘密の趣味だ。中一になった海は、同級生に誘われて行ったスタジオでモデルのマユに出会う。マユのようになりたいと願う海。しかし、その思いを言い出せず、女装の過去も封印、マユと付き合い始めた海だが、高校2年のときのある出会いで、再び、心が波立ちはじめる……。
ジェンダーに悩む主人公の心の遍歴を描いた物語。
選評
ありがちなテーマですが、主人公の心情がきめ細かく書かれていて、好感をもって読める作品です。自分が、いわゆる普通の男子とは異なることを自覚しながら、自分も他人も傷つけるのが怖くて、跳びきれない主人公の深い迷いを、あえてサラリとしたタッチで書くことで、爽やかな作品に仕立てているところを評価。文章はかなり達者で、会話の流し方も上手い。構成としては、多少緩慢なところもありますが、全体としてはまとまっていると思います。ただし、ところどころ、作者の意図が明らかに見えるアザとい部分もあり。エピソードも多少刈り込んでもいいのではないでしょうか。
→ 一覧に戻る