第一次選考通過作品詳細

『ブラック&ブルー』 中川 つちか

 画家を目指して美大を二浪している「僕」は、ある日、公園で、空から落ちてきたハトをキャッチした。怪我をしていたそのハトを連れ帰ると、職業不詳の親父が、近い将来、ハトに連れられて、お前にもラブがやってくる、とふざけた予言をする。その1週間後、同じ公園で「僕」は見知らぬ美少女から「やっと会えた」と声をかけられ、なにがやっと会えたのか要を得た説明のないまま、少女の提案で、彼女をモデルに「見返り美人」を描いて、デッサンの練習をするという約束をする。「僕」は美大受験の先生に、お前の絵には内面が描かれていないと指摘されていた。少女との逢瀬を繰り返すうちに、「僕」は淡い恋心を抱くようになるが、少女がなぜか黒い長袖の服ばかり着てくること、その日に描いたデッサン画を必ず持ち去ることに疑問を憶える。さらに彼女を見張っているらしい謎のストーカー男の気配をたびたび感じるように。初めてデッサンではない、デートの誘いに「僕」が成功した日、彼女が黒服の下に隠していた秘密が明らかになる。「僕」は愛のために立ち上がれるのか?


選評

 構成も文章もしっかりしており、ハトが落ちてくるという書き出しもよいです。全体的にライトノベルめいていますが、読みやすさでもあるので、必ずしもマイナスではありません。また、「僕」とその父親との人をくったような会話が非常に軽妙で魅力的。まるで同年代の友達か先輩とするような会話を父親とするところもちょっとした違和感があっていいのですが、それがのちのちのプロットにかかわる伏線になっているので感心しました。また、内面がうまく描けない主人公が、好きな女の子の黒服の下に隠された秘密を知り、男として成長するという、グローインアップ物の面白さと、家族物の面白さも同時に楽しめます。こんなお父さん欲しいなあと思わせる素敵な父親像に乾杯。

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