第一次選考通過作品詳細

『バリア・ガァル』 季東 将司

 たまきは、幼なじみのみつるに長いこと想いを寄せているが、みつるは小学校からお人形のようにかわいいもうひとりの幼なじみ・トメ子に夢中。社会人になっても、変わることなくその関係性が続いている。
 ある日、失恋したトメ子の携帯に「あなたをバリアが守ります」という不思議なメールが入る。「もう恋なんかイヤ!」と返信すると、これまでモテていたトメ子が男に見向きもされなくなる。あらためて確認したメールの下に「転送すれば、その相手に効力が移ります」と追加項目が現れ、そのメールを自分に転送させるたまき。すると、トメ子が急にみつるを好きになったと言い出す。バリアがたまきのみつるへの想いを断ち切ろうとしていた。
 たまきは、偶然再会したみつるの元彼女・浜坂さんに背中を押され、またバリアを破壊すべくまっすぐな想いをみつるに伝えることを決心する。たまきの長~い初恋物語。


選評

 学園一の美女が惚れるだけあって、たまきの初恋の相手みつるは、人として大切なものを持ち続けているとても魅力的な男の子。会えばけんか腰なふたりだが、本能で一番分かり合っているふたり。
 しょっぱなから関西弁のテンポの良い会話でストーリーが進んでいき、各キャラクターが生き生きとしていてとても入りやすかったです。「あなたをバリアが守ります」などという突拍子もないメールも物語のアイテムとしてちゃんと生きていたし、その内容も笑えました。
 主人公の「恋」を中心に様々な「淡い恋」に触れることができて微笑ましく、また心に沁みる作品でした。目新しさはないが、文章がすっきり的確で完成度が高く、また「暗さ」がない作風と爽快な読後感が良かったです。

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