第一次選考通過作品詳細
『チベット高原の花』 馮 碧波
会社経営者の母に育てられ、大学を卒業した中国人の「私」は、チベット高原にある実家に戻る途中に出会った日本人青年の長谷川に恋をする。長谷川とは、たった1週間の旅行をともにしただけだったが、私の心の中で長谷川への思いは大きくなるばかり。だが、彼女には幼なじみで、地位も財力もある完璧な婚約者がいた。婚約者からプロポーズを受け、彼女の心は揺れに揺れる。彼女がとった選択とは?
選評
「田舎の名家における社交界を舞台にしている」こと、そして「独身のヒロインがタイプの違う男性と出会い、そのうちひとりを結婚相手に選ぶまでの物語」である点で、ジェーン・オースティンの諸作に似た味わいがある作品だと感じて、楽しく読んだ。が、長谷川との最初の出会いからの展開に起伏がとぼしく、再会(そして別れ)のクライマックスまで緊張感が持続しないのがもったいないと感じた。また、ラスト近くの語りで『マディソン郡の橋』という他作品の名を堂々と引き合いに出した部分には、かなり興が削がれてしまった。確かにラブストーリーは類型の積み重ねに違いないのだが、手品のタネ明かしをされてしまったような気がした。
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