第一次選考通過作品詳細

『ショーウィンドウ』 羽澄 愁子

 軽薄な彼氏にふたまたをかけられたショックで家に引きこもったミキ。そんな彼女を心配して、自宅を訪問するようになったゼミの担当教諭。ふたりの間は日に日に親密なものとなり、ミキは担当教諭に恋心を抱くが、彼にはすでに奥さんがいた。不倫の恋に悩むミキを見守るゼミ友のエチゼン。一方、ミキの親友・アヤも、ケイとヒロトというふたりの男性から思いを寄せられ、どっちつかずの恋愛を続けていた。そんなあいまいな関係に終止符を打ったのは、ケイの「怖いほど深い愛情」だった。


選評

 学園モノの作品でキモとなるのがキャラクターの書き分け。読んでいる途中で「誰が誰だかわからなくなる」読者泣かせの作品が非常に多いなか、この作品は、ひとりひとりのキャラクターがたっており、総勢6人と登場人物が多いにもかかわらず、最後まで混乱することなく読み進めることができました。しかも、登場人物の性格やものの考え方を表すエピソード使いが非常に巧み。作者が持つ豊かな発想力、創造性は大いに評価したいところであります。また、読み手を飽きさせないように、衝撃的なエピソードをコマ割りでいれていくストーリー構成も、非常に秀逸。かなり筆力のある方だと思います。
 ただ、難を言うと、エチゼンとケイの恋愛観の違いが分かり辛いように感じました。同じ「相手を見守る愛」でも、ふたりの愛し方にどんな違いがあるのか。そこをもっと書き込んで欲しかったです。

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