第一次選考通過作品詳細

『最愛』 佐藤 慎一郎

 結婚して4年経つ晴彦と雨は、これからの幸せを話し合った夜に、交通事故に遭う。事故により雨は死にゆく怪我を負い、晴彦は命を落としてしまう。雨を想うあまりこの世に魂が残った晴彦は、看護師・幸子の協力により、毎日病院に通い雨を支え続ける。晴彦が死んだことを知らない雨を、切ない想いで見守る晴彦。雨は最期の時を、愛する晴彦とともに迎えることができ、それがふたりにとって終わりであり新たな出発点となるのだった……。


選評

 雨を心から愛していた晴彦の切ない気持が伝わり、何度も涙した。ふたりが思い出を語り合うなかで、どうして生きているうちにあれをできなかったのだろう、なぜ死ななければならなかったのだろうという様々な後悔で、晴彦は本当に苦しんだと思う。近くにいるときには忘れかけていた雨への愛情が、離れたからこそより強い愛情となり、死んでからも一緒にいることを誓ったのだろう。
 愛する人を愛せるときに愛そうと思える作品だ。

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