第一次選考通過作品詳細

『狂気のサクラ』 火口 あきら

 自動車教習場に通い始めたOLの凛は、そこで出会った藤原に一目ぼれする。しかし、藤原は女には本気にならない遊び人。そのことに薄々気づきながらも、彼女はほれた弱みで積極的にアプローチを続ける。やがて2人は深い関係となるが、藤原からはそれっきり連絡が途絶えてしまう。あきらめ切れない凛は、藤原のアルバイト先のバーで働き始めるが、そこで目にしたものは、彼の見境のない女関係だった。悩んだ末に凛がとった行動とは……。


選評

 悪い男だと分かっていてもひかれてしまう女性のさがやどうしようもなさが、ひしひしと伝わってきて、思わず読み込んでしまいました。主人公が自分に素直で動物的なのがいい。まさに「肉食だめんず女子」ですね。共感する女性も多いのではないでしょうか。他のキャラクターの書き分けもよくできていて、それぞれの人物像が浮かび上がってきます。筆力のある方なのでしょう。
 惜しむべくはラスト。表題の「狂気のサクラ」から察するに、冷たい遊び人からDV男に豹変した藤原との別れがクライマックスのはずですが、やけにあっさりしていて物足りない。その後のホストの狭との恋の始まりも唐突。藤原と別れを決意したあたりから文章に勢いがなくなったように感じます。DVの藤原に興味がなくなり、ホストの狭にひかれ出す凛の心情を丁寧に書くと、もっと読者の共感値が高くなるのではないでしょうか。

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