第二次選考通過作品詳細

『雨に煙るワルツ』 沖本 ゆきこ

ロックバンド「ステラ」を売り出そうと結成された、プロモーターチーム「パピオン」の3人の女性が、バンドのメンバーを巻き込んだ恋と肉欲の花を咲かせ、バンドを華々しくデビューさせるとともにそれぞれの人生を爆発させて会社を退社。 散っていく物語。


選評

『雨に煙るワルツ』は、音楽業界を舞台にした内幕もの。文章力に難ありという評価の一方、キャラクター設定に捨てがたい魅力があるという報告が上がっていました。
 「確かに登場人物たちの持つ個性、エネルギーは、ビンビン伝わってくる。設定も内幕ものとしての面白さがある。だが、ひとことで言うと、キャラクターと 設定にのみ頼った力ワザ。状況や心理描写を“言葉”だけで読む者に追体験させるためには、それなりのテクニックが必要」(梅村)、「小説向きの文章でない という点が大問題。説明文のような味気ない文章で、何の真情も感じられなかった」(坂梨)と、さすがの各委員も困惑を隠せない様子でした。評価されたキャ ラクター設定についても、「エゴむき出しの成り上がり女性のキャラクターはこれでもかと描いているのに、天然ボケの主人公と、コネ入社のフェロモン女性の 描き方は、それに比べて淡泊。ちぐはぐな印象があった」(高嶋)、「主人公の3人の女性があまりにぶつかり過ぎで、リアリティを感じられなかった。その関 係性が自然に調和する部分などがあってもいいと思う」(潮凪)などの意見がありました。
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