第一次選考通過作品詳細
『最期の祈り』 咲上 葉琉
渚と麻衣子は、将来を約束した恋人だったが、渚は祖父と台風の日に漁に出て遭難してしまう。 傷心した麻衣子は睡眠薬を飲んで海に入り、自殺をはかるが、すんでのところで助け出される。助けたのは、遭難したはずの渚だった! 奇跡が起こった。だが、そのことを渚は信じられない。 苦悩した末、渚はなぜ奇跡が起こったのか、その真相を探る。 それは、苦い真実だった。
選評
静かで暗い作品だ。 だが、一定のムードをもっており、完成度は高い。 そのムードという点で思い浮かべたのはシャマランの映画『シックス・センス』。 が、この映画が「実は主人公は死んでました」という結末のために作られたのと比べて、この作品は「なんのために主人公は生き返ったのか」ということを解き明かすために作られているという点で新しい。 一点、難を言えば、「麻衣子」と「渚」の一人称を交互に繰り返す語り口がうざい。 この作者ほどの書き手ならば、三人称でも書き通すことができただろう。
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