第一次選考あと一歩作品詳細
『マチビト』 yuku
選評
政治情勢の不安定な土地カンボジアで、48歳の中年男の高雄(殺人を犯して日本を逃亡中)に命を助けられた25歳の尚は、高雄の恋人になる。帰国できない高雄は、日本に残した唯一の肉親、孝太の存在を心の糧にして生きていた。孝太に子供が生まれたとき、すべてを終わりにする。それが高雄の思惑だ。やがて情勢はさらに厳しくなり、尚は高雄に無理矢理帰国させられる。帰国した尚は、同僚の銀行員が自殺したのを期に、名古屋に住む孝太を訪ねた。孝太にはユウリという恋人がいたが、ユウリは突然、孝太の子供を捨てて去る。尚は、孝太とも結ばれていたが、高雄に「終わり」を告げるために再びカンボジアへ渡る──。借金苦の上、逃亡中にヤクザを殺した高雄。父親の愛人を会談から突き落とし、植物状態にしてしまった尚。私生児として生まれ、恋人の子を産みながらも捨てて去るユウリ。登場人物それぞれが劇的な人生を歩み、交錯していく。韓流ドラマをぶっ飛ばす超大河小説と言えなくもないが、エピソード詰め込み過ぎの観もある。エピソードを絞るか(同僚の自殺のエピソードなど)、2倍の分量を書き足すか(物語の視点が尚から離れ、孝太に移ってしまう部分も要検討)。いずれにせよ、かなりの改稿が必要である点で強く推せなかった。
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