第一次選考あと一歩作品詳細
『フロム・コドモランド』 青山 桜子
選評
女性大統領のエキセントリックな施政により、大胆な少子化対策がとられた近未来、日本。ここでは子供たちは、「コドモランド」に隔離され、中は避妊も堕胎も許されない「家畜工場」と化していた。思春期を迎えた主人公たちは、疑問を感じながらも強要されたフリーセックスを実践していく。愛によって結ばれ、愛を守るために「コドモランド」を脱出する主人公の物語。オーウェルの「1984」の逆をつく設定。徹底した管理社会であることは同じだが、前者はセックスが禁じられた禁欲世界、そして本作はセックスを強要されている歪んだフリーセックス世界。この設定が面白い。ただ、場面描写やキャラクター設定などが牧歌的な童話風でおとなしく、この設定でオーウェルばりのグロテスクな物語が読みたかったという物足りなさも感じる。ラストの脱出劇も、性急な描写が続くためにサスペンス感が足りない。「国家から強制されたフリーセックス」という面白い設定をさらに展開させ、これまでの小説にない驚愕の場面や、「セックス」というものの本質を突くような洞察、未来社会への警句といったものが描けたのではないか。
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