第一次選考あと一歩作品詳細

『パンケトーに咲く花』 小陽灘 駿洋


選評

医師と患者を主人公に据えた、「恋人が不治の病で死ぬ」物語だが、丁寧に描き込まれた病院内部の人間関係や、治療の手順をめぐる医師としての悩みが迫真のものになっており、物語を「メロドラマ」ではなく重厚な王道のものにしている。登場人物たちもいのちの尊さや自分たちのなすべきことについて成熟した思考をしており、数多くの恋愛小説の中で、お涙頂戴のために「殺される」ヒーロー・ヒロインたちを愛し救おうとし、救えない無力さに苦しむのは恋人たちだけではなく医師もまた同じなのだということに気づかされる。結末はそれ以外ありえないのだが、早くから予測できてしまうし、読み終えたときに「ああやっぱり」と思わされてしまうのが惜しい。

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