第一次選考あと一歩作品詳細

『パラダイス・ロスト』 村上 令一


選評

端正で抑制の聞いた文章が、美しい島の自然を際立たせ、随所に挿入されるエピソードも、ラウロップ島とそこに暮す人々がヒロインを魅了していく様子を描き出すのに効果的に使われている。何度も読み返したくなる作品。「たどたどしい英語を話す」ヒロインが、彼女との会話に英語しか使えない主人公と、こんなに突っ込んだ内容で会話できるのだろうかという疑問が、ストーリーが進むうちにいつの間にか気にならなくなってくるとはいえ、最後まで残ってしまったのが難点か。二人の思いが重なるのを表すように交わされる言葉が多くなってくる、または、それとは逆に言葉がいらなくなる結びつきを描き出せたのではないか。

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