第一次選考あと一歩作品詳細

『天天開心』 鴫沢 友香


選評

アパレル技術者として、中国の大連工場に出向となった31歳の友香。見知らぬ土地での業務は、大陸の人たちとの性格の不一致、カルチャーショックの連続で前途多難。もがき苦しみながらも仕事に取り組む友香の前に現れたのは工場でバイトをするアシン。身も心もボロボロの働く女に優しい手をさしのべる純真な中国青年に少しずつ心の距離を縮めていく。年の差12歳、給料は1/20──。リズムのある会話、めまぐるしく動く毎日がテンポ良く描かれており、一気に読んでしまった。中国のお国柄や文化がリアルに伝わってきて、とても興味深い。今まで我慢してきたものが、飛行機が飛ばなかったことを発端に吹き出してしまうシーンは、同じ女性として胸に響いた。それでも前向きに仕事に取り組む姿は好感度大。しかし、中国での仕事奮闘記がリアルな分、どうしても恋愛が印象薄。アシンとメール交換はするものの、それ以上何もおこらずENDでは、さすがにラブストリーとしてはどうか。もっと恋愛をからませた展開を読みたかった。

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