第一次選考あと一歩作品詳細
『チャクラ君』 村上 桃子
選評
書店に勤める普通の女の子、南さくらは、恋人の周作と平凡ながらも幸せな日々を送っていた。ところが、さくらの仕事が忙しくなり、すれ違いの時間が多くなる中、周作がさくらの高校の同級生、静香と浮気をしてしまう。傷付いたさくらは、昔、電話で相談事を聞いてくれていた「チャクラ君」のことを思い出す。そして、コンビニで偶然、見かけた男性にチャクラ君の姿をだぶらせる。しだいに現在のチャクラ君にひかれていくさくら。さくらとよりを戻したい周作。そして桜が満開の公園で、チャクラ君の正体が明かされる──。普通の女の子がする普通の恋愛に、少しだけファンタジーを加える。キャラクター設定や日常の出来事をさらっと読ませる文章力は秀逸なだけに、ファンタジー要素である「チャクラ君」のキャラ設定のあいまいさがもったいない。この部分だけ、リアルに深く掘り下げることができれば、作品の完成度はかなり上がっただろう。
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